—— 三代目絵師・辰昇(しんしょう/いわき絵のぼり吉田)。
先代から受け継いだ技と、江戸期の一級品から学んだ筆法を融合し、武家文化と江戸絵師文化が交差した手描き絵のぼり文化を現代に再構築する絵師。
手描き絵のぼりは、かつて全国で鯉のぼりの原型として親しまれた文化。
その価値を、神社仏閣・祭礼団体・企業・家庭の節句まで幅広く特注制作。
研究・収集・発信を通じて「文化の還元」を実践している。
—— 日々の暮らしの中で、ふと立ち止まる瞬間があります。
風に揺れる布を見たとき──
そこに描かれた武者や神々の姿が、なぜか胸に響いたとき──
そんな記憶をお持ちの方は、どれほどいらっしゃるでしょうか。
私・辰昇(しんしょう)は福島県いわき市を拠点に、江戸時代に広く親しまれた「絵のぼり」文化の再定義と再構築に取り組んでいます。
この文化は、武家社会の旗指物を源流とし、町人の端午の節句飾りへと発展。
人々はそこに祈りや願いを託し、暮らしの中で大切にしてきました。
江戸時代の絵のぼりは、庶民文化の粋として浮世絵師たちも関わりました。
葛飾北斎や歌川広重など名のある絵師が武者や神仏を描き、その筆致は旗の上で力強く舞いました。
絵のぼりは、単なる節句飾りではなく、一流絵師の技法が注がれた「町に掲げる絵画」でもあったのです。
今ではその姿を目にする機会は減りましたが、私の工房には── 神社仏閣・祭礼団体・企業・アパレル・家庭の節句に至るまで、 「もう一度、旗を掲げたい」という声が全国から届いています。
このページでは、私の経歴・制作理念・文化的背景をご紹介しながら、「いわき絵のぼり」が現代社会で持つ可能性を、皆さまと共に見つめていきたいと思います。
ご依頼やご質問がありましたら、下記フォームよりお気軽にご連絡ください。
—— 幼い頃から絵を描くことが好きで、当時の夢は漫画家でした。
しかし、高校を中退し、人生に迷った時期があります。
その後、再び高校に入り直して卒業。
そして建築設計の専門学校に通っている間、祖母から
「跡を継いでくれたら嬉しいな」
と声をかけられ、絵のぼりの世界に足を踏み入れました。
卒業間近に祖母は病に倒れ、直接の教えは受けられませんでしたが、病室に飾った私の描いた恵比寿大黒の色紙を静かに見つめる祖母の姿── その光景こそが、私をこの道へ進ませた原点です。
—— 絵のぼりの起源は、戦国時代の旗指物(武将が背に掲げた旗)にさかのぼります。
旗は江戸時代、町人文化と融合し、端午の節句の飾り物として発展。
子どもの健やかな成長や家の誇りを象徴する祈りの絵画として親しまれました。
空に掲げることで、家の祈りは社会とつながる── 絵のぼりは視覚メディアであり、空間装置であり、暮らしそのものの文化でした。
私はこの文化を「過去の再現」にとどめず、現代の空間と感性にふさわしい形へ磨き直し、未来へ再接続することを理念としています。
—— 私の制作の背景には、江戸期から明治期にかけての肉筆絵のぼりの蒐集・研究があります。
自ら古作を収集し、筆遣いや彩色法の分析を行うことで、失われかけた技術を現代に甦らせています。
その成果は、制作する現代の祭礼や節句飾りにも息づいています。
—— かつて端午の節句に掲げられていた「招き」と呼ばれる絵のぼりの先端の小旗は、やがて立体的な鯉となり、鯉のぼりが誕生しました。
つまり鯉のぼりは絵のぼりの“子ども”とも言えるのです。
—— 私はこの文化を「過去の再現」にとどめず、現代の空間と感性にふさわしい形へ磨き直し、未来へ再接続することを理念としています。
私の活動の特徴は次の通りです。
また、「線と構図」の力を深めるために、当初は古画の模写で修練を積みました。
特に室町期の画僧祥啓や幕末の鬼才河鍋暁斎による鍾馗図を模写し、現代風ではない重みのある線を表現に取り入れています。
大宮八幡宮(東京都) 奉納扁額《子守神功皇后之図》2013
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BEAMS JAPANとのコラボレーション 2019
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鎮守氷川神社(埼玉県)《スサノオ図 大幟》2020
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石切劔箭神社/日下太鼓台(大阪府) 太鼓台幕絵制作 2020
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田辺三菱製薬 40周年記念絵画《大龍図》2018
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仏画 《普賢菩薩座像》個人蔵 2021
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郡山市PR巨大幕絵《鯉に恋する郡山》2018
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いわきFC応援幕《鍾馗図》2024
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相馬野馬追 旗指物《海老図》2025
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※ほか、節句・祭礼・御朱印・壁画装飾など特注制作多数
—— 私の工房は、東日本大震災で被害を受けた福島県いわき市にあります。
この経験を通じて── 「祈りと暮らし」「文化と空間」「人と人のつながり」 そのすべてが、かけがえのないものだと実感しました。
私はこの小さな工房を文化の発信拠点と位置づけ、全国の神社仏閣、企業、自治体、個人と連携しながら、「文化の還元」を軸に活動を続けています。
—— 今後も、江戸の構図・色彩・筆致を現代に翻訳し、 絵のぼりを「祈りのメディア」「空間の装置」として再定義していきます。
そして── この文化の魅力と意義を、地域や世代を越えて、静かに、確かに、未来へ手渡していきたいと考えています。
1978年:福島県いわき市生まれ
2004年:3年間の修業を経て活動開始
2013年:大宮八幡宮 奉納扁額《子守神功皇后之図》
2018年:田辺三菱製薬×NZ企業 記念作《大龍図》
2018年:イオンモールいわき小名浜 壁画原画
2018年:郡山市PR幕絵《鯉に恋する郡山》
2019年:BEAMS JAPANとのコラボレーション
2020年:鎮守氷川神社《スサノオ図 大幟》
2020年:石切劔箭神社 太鼓台幕絵
2021年:仏画《普賢菩薩座像》個人蔵
2024年:《ときめく日本職人図鑑》掲載
2024年:いわきFC応援幕《鍾馗》制作
2025年:相馬野馬追 旗指物《海老》制作
—— 制作実績の詳細や画像付き資料は[こちらのPDF]よりご覧いただけます
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「絵幟の歴史を堪能出来る空間でした。鍾馗幟旗は生で見ると迫力がヤバかったです。生で見なきゃもったいないです!」