—— 絵のぼりや奉納画など、
祭礼の場で育まれてきた絵画文化を、
現代の暮らしと祭礼の場にふさわしい形で還していくこと。
何を描き、なぜ描き、どう描くのか。
その考えと基準をまとめています。
文字が広まる以前、
絵は、共同体の祭礼の場で祈りや記憶を支えていました。
その営みは、壁画から奉納幕や旗指物、
そして絵のぼり(節句幟)へと姿を変えながら、
時代を越えて続いています。
その流れの中で、
現代にふさわしい「祭礼絵画」のかたちを模索しています。
祭礼絵画とは、
祭りや節句などの場で用いられ、
共同体の祈りや記憶を可視化する絵画です。
私の制作も、この流れの中に位置づけられるものです。
かつて全国で描かれていた節句幟や幕絵。
それらの古作に学び、技と意味を、現代の暮らしにふさわしいかたちへと再構築しています。
人の手で描かれる儀礼の絵は、形を変えながらも、
今も必要とされる場に確かに息づいています。
それぞれの場に寄り添い、
祈りをかたちにすること。
それが制作の根幹です。
—— 作品はすべて、筆による手描きです。
筆の入り・運び・止め。
その動きが、画面の構造をつくります。
遠目でも意味が伝わるのは、
線が情報の骨格を担っているからです。
古作に学び、受け継がれてきた構図や色彩を大切にしながら、
現代の場にふさわしい形へと整えています。
誰のために描かれたのかが見えること。
それが、手描きである理由です。
幟や幕は、元々共同体の象徴として用いられてきたものです。
そのため、現代においても新しく描かれていくことは、
ごく自然なことだと思っています。
制作では、これまで積み重ねられてきた文脈を踏まえながら、
その場に流れてきた時間の深度を感じられる絵を心がけています。
そうして描いていくと、結果として江戸期以前の画風に近い表情になることもあります。
古い形をなぞるというより、そこに流れてきた時間を受け止めながら、
今の時代の一枚を描いています。
絵のぼりや幕絵は、装飾ではなく、
人と人をつなぐ記憶の装置です。
残したいのは、絵そのものではなく、
絵を通して人がつながること。
子どもが、自分のために掲げられた幟を思い出すこと。
地域の祭りの場に、歴史を語る幕があること。
それらは、言葉ではなく、筆の痕跡で綴られます。
祈りの絵は、時代の出来事とともに生まれ、
やがて社会の記憶として読み返されていきます。
—— 古作に学び、現代の場にふさわしい「かたち」を描くこと。
それが、絵師としての理念です。
辰昇|絵のぼり絵師
制作の実際については、これまでの事例をご参照ください。
松重豊さん出演「福島豊」Youtubeシリーズにて、
絵のぼり工房として紹介されています。
工房訪問回および絵のぼりのお披露目回です。
人の集まるハレの場を象徴する、ユーモラスな「旗印」として。
松重豊さんが工房へ(第7話)
絵のぼりお披露目(第8話)