—— 鳥居派七代目当主・四代目鳥居清忠による《鍾馗図座敷幟》。縮緬に鍾馗を描いた小型の手描き幟で、端午の節句に室内で飾られたものです。
歌舞伎の絵看板を手がけた清忠の仕事を、鍾馗の人物表現や筆づかい、付属する家紋幟とともに紹介します。
1|四代目鳥居清忠《鍾馗図座敷幟》について
- 題名:鍾馗図座敷幟 ※非売品
- 時代:明治~昭和初期
- 産地:東京
- 作者:四代目鳥居清忠(鳥居派七代目当主)
- 素材:縮緬
- 技法:肉筆(手描き)
- 寸法:約50×約36cm
- 付属:家紋幟 2旒
- 所蔵:いわき絵のぼり吉田
―― 本作には、端午の節句の魔除けとして親しまれてきた鍾馗が描かれています。
力強い姿でありながら表情には親しみが感じられる、鍾馗の存在感がよく表れた作品です。
2|鳥居派と四代目鳥居清忠
―― 鳥居派は、江戸時代から歌舞伎の絵看板や役者絵を手がけてきた画系です。
四代目鳥居清忠(1875~1941)は、鳥居派七代目当主としてその伝統を受け継ぎ、歌舞伎座などの絵看板を描いた絵師として知られています。
歌舞伎の絵看板には、劇場を訪れる人々の目を引き、役者の姿や芝居の見せ場を伝える役割がありました。
本作は、そうした仕事に携わった絵師が、個人の節句飾りにも筆を執っていたことを伝える一幅です。
3|鍾馗の人物表現と鳥居派の筆法
―― 鳥居派の初期の役者絵には、筋肉や手足を大胆に表す「瓢箪足」、抑揚の強い線で描く「蚯蚓描き」と呼ばれる特徴的な描法が見られます。
これらは、歌舞伎の荒事における勇壮な人物表現とも結びついた筆法です。
本作の鍾馗も、そうした鳥居派の古典的な人物表現に通じています。
4|縮緬の座敷幟と付属する家紋幟
―― 本作は、座敷幟あるいは内幟と呼ばれる、室内用の節句幟です。
縮緬の柔らかな布地に鍾馗を描き、屋外用の幟とは異なる大きさと仕立てで、室内の節句を彩っていたものです。
また、本作には正絹製の家紋幟が二旒付属しています。
鍾馗図の本体と家紋幟では布地の風合いが異なることから、絵師による鍾馗図に合わせ、販売店や注文主が家紋幟を別に誂えた可能性も考える事が出来ます。
5|近代に受け継がれた絵師の仕事
―― 四代目鳥居清忠は、近代に入ってからも歌舞伎の絵看板という格式ある仕事を担い続けた絵師でした。
古い画法を受け継ぐ絵師の仕事と、節句幟を飾る暮らしの文化。その両方が近代にも息づいていたことを、この小さな座敷幟から感じ取ることができます。
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