—— 江戸後期の浮世絵意匠をラフに簡略した筆致に、地方性が色濃いいわき絵のぼりの面影が見えます。
男児の誕生を知らせ、健やかな成長を願う節句の祈りが、神話英雄・日本武尊の姿に託されました。
—— 太い輪郭と抑えた配色で、英雄の決意を端的に表現。
装飾過多を避けることで、視線は自然と顔の表情へ導かれます。
—— 東征で敵に四方から火を放たれた武尊は、天叢雲剣で草を薙ぎ払い、逆風を利用して向かい火を放ち脱出。
この逸話から剣は草薙剣とも呼ばれ、危難突破の象徴として端午の意匠にしばしば選ばれました。
—— 幕末の思想潮流から明治の新体制へ。
神話研究の高まりは視覚文化にも波及し、節句の画題として日本武尊などの神話英雄が広く親しまれました(戦前までは定番モチーフ)。
—— 明治初期までは30数cm幅の手織り布を二枚縫い合わせて幅を確保。
明治後半以降は幅広の機械織りが普及します。
いわき地方では大正期も手織り生地が多く、都市部との近代化の濃淡が幟にも表れました。
—— 省略の効いた線と配色は、地方の生活感と信仰を映すもの。
作者無銘ながら、筆致は私の曽祖父・近藤辰治に通じる可能性があり、家々の節句を彩った地域の記憶が残ります。
いわき絵のぼり吉田・絵師 辰昇(しんしょう)
工房をご見学いただいた方の投稿より(@irodori_koinbr 様):
「絵幟の歴史を堪能出来る空間でした。鍾馗幟旗は生で見ると迫力がヤバかったです。生で見なきゃもったいないです!」