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手描き武者のぼり|いわき絵のぼり吉田 絵師・辰昇

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宗興|桃太郎図幟
——大正六年の節句幟に託された家の誇りと祈り

桃太郎図幟(大正六年・宗興作)

作品データ

桃太郎図幟(大正六年・宗興作)
  • 題名:桃太郎図幟 ※非売品
  • 時代:大正6年(1917)※「五月節句十日前」の筆記あり
  • 産地:不詳
  • 作者:宗興(花押あり)
  • 素材:麻
  • 技法:肉筆(手描き)
  • 寸法:約290×約35cm
  • 所蔵:いわき絵のぼり吉田

—— 一見素朴ながら、画面には確かな気迫祈りが宿ります。

大正期の家庭が、初節句に寄せた家の誇り男子の理想像が、桃太郎像に重ねて描かれています。


「宗興冩」と花押——依頼制作の記録

桃太郎図幟の筆記:應需/大正丁巳六年五月節句十日前/宗興冩・花押

—— 「應需(依頼による制作)」と年月日、さらに花押まで記すのは節句幟(絵のぼり)では稀。

宗興は専門絵師とは断じ難い筆致ながら、署名・構図への意識から素性ある描き手だった可能性が覗きます。


威厳を帯びた桃太郎——武家の理想像として

威厳ある桃太郎の表情(日本一の旗を掲げる)

—— 正面を見据える眼差し、刻まれた眉間、丁寧な武具表現。
童話的可愛らしさよりも武家の威風が強く、当時の家庭が願った男子の理想像が反映されています。


犬・猿・雉——忠義と覚悟を描く三者三様

家来の犬
家来の猿
家来の雉

—— 武人のように前を射る犬、鋭い眼で睨む猿、素早く舞い降りる雉。

擬人化を思わせる筆致は、技術以上に込められた心が画面に立ち上がる好例です。


大正六年——武家の面影を伝える時代

—— 明治維新から半世紀、旧家にはなお家名と格式の誇りが息づいていました。

幟は武家儀礼に起源を持つ「家の理想」の象徴。
宗興の記した花押や構図意識は、
依頼家の由緒願いを背負った制作だったことを想像させます。


幟に宿る「個」の記憶

宗興の筆跡から読み解く人物像

—— 絵のぼりは布であると同時に、その時代を生きた誰かの心の痕跡です。
署名と花押が残した手掛かりから、宗興という個人の気配が今日へと繋がっています。

いわき絵のぼり吉田・絵師 辰昇(しんしょう)


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