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手描き武者のぼり|いわき絵のぼり吉田 絵師・辰昇

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明治〜大正期の武者絵幟|秀吉図幟
——千成瓢箪が示す英雄像と、分業が生んだ筆致のコントラスト

明治〜大正期の武者絵幟|秀吉図幟(全体)

秀吉公を描いた、明治〜大正期の武者絵幟

—— ここでご紹介するのは、明治〜大正時代頃に制作されたと見られる武者絵のぼり(幟)〈秀吉図〉です。

馬印として知られる千成瓢箪(せんなりひょうたん)が掲げられ、豊臣秀吉(羽柴秀吉)を示す典型の意匠が確認できます。

切画師・風祭竜二先生のコレクションとして伝来し、資料として当方に譲られました。

秀吉図幟(部分)千成瓢箪の意匠
  • 題名:秀吉図幟 ※非売品
  • 時代:明治〜大正
  • 産地:栃木県佐野市(推定)
  • 作者:無銘
  • 素材:木綿地・墨・顔料
  • 技法:肉筆(手描き)
  • 寸法:縦 約345cm × 横 約65cm
  • 所蔵:いわき絵のぼり吉田


—— 明治〜大正期には、手描き武者幟の制作が各地に見られました。

なかでも佐野(現・栃木県佐野市)は、当時の一大産地として知られ、本作もその系譜に連なる可能性が高いと考えます。


地域と制作背景——千成瓢箪が語る英雄像

秀吉図幟|面相(胡粉の剥落が見られる)

—— 面相には胡粉の剥落が見られますが、筆置き・ぼかしの妙味は健在です。
瓢箪の馬印は秀吉の武運長久を象徴し、端午の祝いにふさわしい「吉祥」の物語を掲げます。

当時の職人・絵師たちは、地域の美意識と祝祭の機運を背景に、こうした英雄譚を幟へ移し替えました。


分業が生んだ筆致の対比——要所は繊細に、背景は力強く

秀吉図幟|馬体の筆致(太く単純化し遠望性を高める)
秀吉図幟|甲冑・装飾(遠見で収まりよく映る描き込み量)

—— 本作は分業で制作された可能性が考えられます。

たとえば、背景や馬体・甲冑は太く大胆な筆線で素早くまとめ、面相などの要所は繊細な筆運びで仕上げる、といった役割分担です。

離れて見た際に映える単純化と省略、近接で惹き込む精緻——両義の筆致が一枚の幟の中で呼応し、祝祭空間にふさわしい視覚効果を生んでいます。


おわりに——地域の手仕事を語る資料として

—— 本作品は、明治〜大正期の制作、佐野周辺の制作圏に属すると推測されます。

当時の地域職人の手仕事分業体制の実相を伝える一次資料でもあります。

今後の比較研究によって、各地の画風・系譜がより明確になることを期待しています。

いわき絵のぼり吉田・絵師 辰昇 (しんしょう)


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